西条市H・Mさまより
【目には見えないけれど大切な事】
梅の花が咲き始めた頃
遠く離れた故郷から
悲しい報せが届いた…
最期のお別れの場所へは
行く事は叶わないけれど、せめてお供えだけでもと思い薔薇を贈った。
薔薇が届いたその日。
携帯のベルが鳴った。
電話の向こうから懐かしい声がした。
「私に薔薇を頂いたのですが、私はあなたの事を存じあげませんが…」
私が旧姓を名乗ると
「え〜!!え〜!!久子ちゃん?久子ちゃんね!わ〜っ!
私に!私に贈ってくれたとね!」
叔母へ伯父のお悔やみと
お参り出来なかった失礼をお詫びすると
叔母は
大切な人を
亡くしたばかりで
1番悲しいはずなのに
先ず
私と妹の幸せを気遣ってくれた。
幼い頃辛い思いや苦労ばかりしていた私達が幸せになってくれて嬉しい。
あの頃はみんなそれぞれ辛い事ばかりだったけど今はみんなが幸せになって嬉しい。
生まれて初めてこんなに
沢山の薔薇を贈ってもらって、嬉しい。
なんだか、叔母の笑顔がすぐそばにあるようだった。
数日後
叔母から再び電話があり
「久子ちゃん。この薔薇の清らかな白、特別やね。こんな美しい白は初めてよ。日に日に美しさが増ね。そしてこの香り。こんな良い香りで朝を迎えられて幸せよ。」
「お参りに来てくださる方が
見事な薔薇ですねって言ってくださるとよ。その度に姪が贈ってくれたんですと言ってるのよ。」と誇らしげに語る叔母。
「それでね、あまりに嬉しくて、
またお礼を言いたくて電話したよ」
ずっと逢いたいと思いながら
その思いは叶わないまま
気がつけば
30年もの月日が流れていた…
壊れて砕けてしまった親族。
ぐちゃぐちゃに絡み合う人間関係。
長い年月と
薔薇の花束が
解してくれた。
コメントおまちしております