息子の卒業
大学の卒業式が終わって
息子が西宮のバーに連れて行ってくれた。
ここ数年
何軒もバーを回り
自分の好きなお店を
開拓してきたそうだ。
高校卒業時
服の奥深さを教えたくて
パターンオーダーだが
既製品ではないスーツを
一緒に買いに行ったことがきっかけで
スーツが大好きになり
大学時代は
三宮のスーツカンパニーでバイト。
バイトの先輩の影響で
靴にはまり
靴磨き職人で有名な
長谷川さんが経営する
青山のシューズバーにまで
訪ねて行った。
親はお金を一銭も出していない
ヨーロッパへの留学は
服への興味も一端となった…と
就職活動では
ファッションについて
語りまくったそうだ。
バーにはまったのは
お酒の奥深さだけでなく
オーナーがダンディズムのイロハを
教えてくれるからだとうそぶく。
「紳士道は一部の人のもの。
でもダンディズムは
全ての男性が持つべきものです。
それを追及していってください」
と師匠のひとりであるマスターからの言葉を
偉そうに語る。
息子が気に入っているという
シンガポールスリングのラッフルズスタイル…
という名前を二度と言えないドリンクを飲みながら
そんな話を聞いていると
とっても気障な
私が全然知らない世界だけど
社会人になっても
こんな風に色んな人に
たくさんの事を教えてもらうんだろうなあと
本当に多くの方に
感謝の気持ちで一杯になる。
「東京に行ったら
きっと悩むこともあるだろうけど
自然の中に身を置けば
違う自分が見えてくるから
そんな時には
ひと休みしにかえっておいで」
と田舎の母親らしいことを言うと
鼻で笑われる。
普段から私の考え方も
「左に寄ってるし」
と小ばかにするが
息子がはまっている
人間が生きてきた長い歴史の中で生まれてきた
人間らしい文化は
私も大好きで
独身の若いうちに
思いきり味わってほしいと思っている。
そしてそれらの経験から
生産性があって
誰かを幸せにできて
自分が自分を
そして皆が自分を祝福したくなるようなものを
産みだす仕事に
関わっていって欲しい。
バーでの最後の支払いは
「新札でするとかっこいいよ」
と奢るつもりで
お金を渡しながら教えると
「それは知らなかった」
と喜んでいた。
彼の目指す
ダンディズムのヒントに
少しはなったかな。
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