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蘇芳染

蘇芳染

人間国宝・志村ふくみ先生の元で学ばれた
松山在住・染織作家 野本久美先生の染色講座。
4年ぶりの開催は蘇芳染。
私もストールを
アルミ媒染(赤)と鉄媒染(紫)の
2種で染めました。
野本先生の元に集まる方たちは
着物がお好きな方が多く
亀甲柄などの半襟や帯揚げなどもお持ちになり
着付けなどの話題も広がります。
「天日干しは褪せてしまうから
草木染は特にご法度!」
とは、毎回仰るのですが
「化学染料だって布からは退色してしまう。
色は永遠ではないんだよね。」
とふと漏聴こえた野本先生の言葉に
私が薔薇という「生もの」を
扱う時の気持ちが重なります。
染料を集めることからはじまり
湯の温度や量
細かいことに気を配らなくてはならない
染の作業。
そこからやっと生まれた命も
褪せたり
枯れたり
永遠でないからこそ
追い求めるし
循環するものもあるのですよね。
野本先生は
美術展などで
平安や飛鳥からの絹織物の
縫い目の糸など
日が当たりにくい部分に
当時の色がまだ垣間見えるものを発見すると
本当に感激されるそうです。
特に蘇芳は
飛鳥時代に中国から渡来し
平安時代には貴族に珍重された
とても貴重な染料だと聞くと
染めながらロマンを感じ
ワクワクしました。
丁度わたしたちは満月の日に染めましたが
古人はもっと敏感に
天候や暦で
染め上がりが違ったりすることを
身体で知っていたのでしょうね。
そして野本先生にとって
蘇芳は志村ふくみ先生との
大切な思い出の色なのです。
「蘇芳で染めたことがない」
という野本先生に
「いつか教えてあげるね」
とおっしゃった志村先生の言葉を
社交辞令程度に受け止めていた野本先生。
ですが、志村先生はちゃんと覚えておられて
野本先生のために
京都で個人授業を
段取りしてくださったそうです。
志村先生が約束を
ちゃんと叶えてくださったこと、
勿論野本先生が持つお力を
感じておられたからでしょうが
私たちもその野本先生から
蘇芳染を学ばせてもらえていること。
味わえば味わうほど
私たちにとっても
特別な時間になりました。
そして私たちのお喋りも
その時感じた思いも
色と共に吸収し
完成したストールたちが
ふわふわと美しく
風に身を任せていました。

帰宅後
蘇芳について
色々調べたり
うさぶろうさんの「あいをよる」を
10年ぶりくらいに
一気に再読。
また思考も深まり
「染」という時間の
自分への薬効に感謝しています。

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