江南の春
お稽古時
師匠が茶室に置いてくださっていた
杜牧の「江南の春」の書。
同じ世代の方は
高校の教科書には必ず載っていた
七言絶句のこの漢詩を
懐かしく思っておられるのではないでしょうか。
「千里鶯啼いて緑紅(くれなゐ)に映ず
水村山郭(すいそんさんかく)酒旗(しゅき)の風
南朝四百八十寺(しひゃくはっしんじ)
多少の楼台煙雨(えんう)の中」
詩の内容も情景もリズムも
とても好きなのですが
蘇ってきたのは
杜牧が表現した
遥かなる風景以上に
煙雨の中に遥かに続く楼台を
うっとり想像していた
夢見る高校生の私でした。
私の古文の先生は
松山市内の商店街にある
お寺の和尚さんでした。
教室に入ってきたら
外がどんなに吹雪いていても
「はい!窓を全部開けて、きりーつ!」
と気合を入れられ
私たちは「さむ~」と
苦笑いしながら窓を開け
教科書を両手に持ち
大声で音読させられていた光景を
思い出します。
先生の熱のこもった
古文や漢文の解説は
歴史のその場に立っているように
臨場感があるもので
まるで講談をきいているがごとく
聞き入りました。
大好きな授業だったので
丁度国語が当たった参観日には
「面白い先生だからね!」と
母にも前宣伝を沢山して
ぜひ来てほしいと
伝えたことを思い出します。
参観日後、母も一緒に面白がってくれて
その後、商店街の先生のお寺の前を
二人で通るたびに
先生の話題になりました。
私にとって
江南の春の詩は
音楽や香りが
記憶を呼び覚ますことがあるように
七言絶句の韻のリズムと
学校の窓から入る冷たい風と
母と歩く商店街の匂いとに
再会させてくれたものでした。
五感で捉えたものが誘う
ロマンとノスタルジーに
改めて酔わせてもらいました。
(遅ればせながら
2月のお稽古の写真とご報告です。
屏風は、社中の伊藤守さんが持って来られた
亡きご友人で書の達人の作品でした。)
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